営業職のためのブランディングパラレルワーク 既存の営業人脈から最初の案件を獲得する具体的なアプローチ
はじめに:培ってきた営業人脈はパラレルワークの強力な財産
IT企業の営業職としてご活躍されているあなたが、独学で習得されたデザインやブランディングの知識を活かし、パラレルワークとして新たな一歩を踏み出したいとお考えとのこと、素晴らしい挑戦です。実務経験がない中で案件獲得に対して漠然とした不安をお持ちになるのは自然なことです。しかし、あなたはこれまでの営業活動を通じて、かけがえのない強力な財産を築いてこられました。それは、既存の「営業人脈」です。
新規のクライアントをゼロから開拓することは容易ではありませんが、すでに信頼関係が構築されている人脈に対してアプローチすることは、未経験からパラレルワークを始める上での非常に有効な手段となり得ます。この記事では、あなたがこれまでの営業経験で培った人脈を最大限に活かし、最初のブランディング案件を獲得するための具体的なアプローチについて解説します。
なぜ営業人脈がブランディング案件獲得に強いのか
営業職として活動されてきたあなたは、多くの方々とビジネス上の繋がりを持ち、様々な企業の課題や事業背景に触れてこられたことでしょう。この経験は、ブランディングの仕事において非常に重要なアドバンテージとなります。
- 信頼関係の構築: 営業活動を通じて、あなたは相手との信頼関係を築くスキルを磨いてきました。ブランディングの仕事は、クライアントのビジネスの根幹に関わるため、強い信頼関係が不可欠です。既存の人脈は、この信頼関係がすでに存在しています。
- ビジネス背景の理解: 顧客として関わってきた企業や業界のビジネスモデル、課題、目標について、あなたは表面的な情報だけでなく、営業という立場からより深い理解を持っています。これは、効果的なブランディング戦略を立案する上で貴重な洞察となります。
- 潜在ニーズの把握: 営業活動では、顧客の顕在的な要望だけでなく、その背後にある潜在的な課題やニーズを引き出すことが重要です。このスキルは、クライアント自身も気づいていないブランディング上の課題を見つけ出すのに役立ちます。
これらの要素は、ポートフォリオや実績が十分でない状況であっても、あなたの「信頼性」と「ビジネスへの理解」という形でクライアントに価値を伝える基盤となります。
既存人脈から最初の案件を獲得するための具体的ステップ
では、具体的にどのようなステップで既存の営業人脈にアプローチすれば良いのでしょうか。
ステップ1:アプローチ対象となる人脈のリストアップと優先順位付け
まずは、あなたがこれまでに築いてきた人脈を整理しましょう。特に以下のような繋がりを持つ方々をリストアップしてみてください。
- 過去の顧客(特に良好な関係を築けている企業や担当者)
- 取引先の担当者
- 異業種交流会などで知り合ったビジネス関係者
- 本業の同僚や先輩(特に社内副業や紹介が可能な場合)
- ビジネス系の勉強会やコミュニティの仲間
リストアップしたら、その中でも特に以下のような視点で優先順位をつけます。
- 関係性の深さ: 信頼関係が強く、気軽に相談できる相手か。
- ビジネスへの理解: あなたが相手の事業についてある程度理解しているか、あるいは相手があなたの能力や人柄をよく知っているか。
- ブランディングニーズの可能性: 相手の事業に、ブランディング的な課題やニーズがありそうか(例:リニューアルを検討している、新規事業を立ち上げる、採用に課題があるなど)。
最初は、最も関係性が深く、話しやすい相手からアプローチするのが良いでしょう。
ステップ2:パラレルワーク開始と提供価値の整理
人脈にアプローチする前に、自分がパラレルワークとして何を提供するのかを明確にしておく必要があります。独学で学んだブランディング知識を、具体的にどのような形で相手のビジネスに貢献できるのかを整理します。
- 提供できるサービス: ロゴデザイン、Webサイトデザイン、SNS運用支援、コンセプトメイキング、ターゲット顧客設定支援など、具体的に何ができるかをリストアップします。最初は得意なことや、比較的小さな範囲から始めることを検討しましょう。
- 独学知識が活かせるポイント: ブランディングのフレームワーク(例:AIDMA、SWOT分析など)、デザインツール(例:Photoshop, Illustrator, Figmaなど)、マーケティングの基礎知識など、独学で得た知識がどのようにクライアントの課題解決に繋がるかを言語化します。
- 営業経験が強みになる点: クライアントの課題を引き出すヒアリング力、提案力、コミュニケーション能力、ビジネス全体を見る視点などが、ブランディングの仕事でどのように活かせるかを具体的に伝わるように整理します。
まだ実績がない場合は、「独学で〇〇を学び、ブランディングの視点から企業の課題解決をサポートしたいと考えています」「特に〇〇の分野に興味があり、これまでの営業経験で培ったヒアリング力を活かして、御社の潜在的なニーズを引き出すお手伝いができればと考えています」といった形で、意欲と強みを伝える準備をします。
ステップ3:自然な形でのアプローチと情報交換
リストアップした人脈に対して、いきなり「ブランディングの仕事を受けたいのですが」と営業をかけるのは避けた方が賢明です。まずは、近況報告や情報交換といった自然な形で接触を図りましょう。
- 連絡方法: メール、SNSのメッセージ、電話など、普段相手と連絡を取っている方法を選びます。
- 切り出し方:
- 「最近、個人的にブランディングやデザインの勉強をしていて、企業の事例などを色々と調べているんです。」
- 「最近、〇〇さんの会社のWebサイトを拝見しまして、とても素敵な取り組みをされていますね。もしよろしければ、事業の状況などお話をお聞かせいただけますか?」
- 「実は個人的に、本業とは別にブランディングに関する活動を少しずつ始めているんです。」
このように、まずは自分の近況として「ブランディングに関する勉強や活動をしている」という事実を共有します。そして、相手の事業や近況について聞く姿勢を見せます。あなたの営業経験で培われた傾聴力をここで発揮しましょう。
ステップ4:相手の課題やニーズのヒアリング(営業スキルの活用)
情報交換の中で、相手の事業に関する課題や、何かを変えたい・改善したいというニーズがないかを丁寧にヒアリングします。このプロセスは、まさにあなたが本業で得意とされている部分です。
- ヒアリングのポイント:
- 現在の事業状況、特に力を入れている点や課題。
- ターゲット顧客や市場でのポジショニングについて。
- Webサイト、パンフレット、SNSなど、顧客との接点となるツールの現状。
- 採用活動や社内エンゲージメントに関する課題。
- 競合他社との差別化について考えていること。
- 今後チャレンジしたいこと、描いているビジョン。
これらの会話の中で、「ロゴが古くなってきた」「Webサイトからの問い合わせが少ない」「会社やサービスの魅力が伝わりにくい」「採用応募が集まらない」といった、ブランディングに関連する課題の糸口が見えてくる可能性があります。
ステップ5:課題に対する貢献の提案(小さな案件から)
もしヒアリングを通じてブランディングに関連する課題が見つかった場合、すぐさま大掛かりなプロジェクトを提案するのではなく、まずはあなたの独学知識と営業経験が活かせる「小さな案件」から提案することを検討します。
- 提案の例:
- 「御社のWebサイトの導線について、顧客視点での課題をまとめることができます。」
- 「採用活動についてお悩みとのことでしたので、求職者に響くような会社紹介資料の構成案を考えてみましょうか?」
- 「新しいサービスコンセプトについて、顧客に分かりやすく伝えるためのキャッチコピーのアイデア出しをお手伝いできます。」
- 「SNSでの情報発信について、ターゲット層に合わせたトーン&マナーをご提案できます。」
このように、相手の具体的な課題に対して、あなたが提供できる価値を結びつけて提案します。この段階では、ポートフォリオがないことを正直に伝えつつ、「実績はまだありませんが、これまでの営業経験で培ったビジネス理解と、独学で体系的に学んだブランディングの知識を活かして、御社の課題解決に真摯に取り組みます」といった誠実な姿勢を示すことが重要です。
また、テスト的な意味合いで「まずはお試し価格で」「最初の〇〇だけ」といった、相手にとってリスクの少ない形で提案するのも有効です。既存の信頼関係があればこそ、こうした柔軟な提案が受け入れられやすくなります。
人脈活用における注意点と成功のヒント
- 本業への配慮: パラレルワークは本業に支障が出ない範囲で行うことが大原則です。会社の就業規則を確認し、許可されている範囲で活動しましょう。また、本業の顧客や取引先と直接関わる場合は、特に慎重な配慮が必要です。
- 個人名での活動: 基本的には、本業とは切り離し、個人名や屋号で活動することになります。その点を明確に伝えましょう。
- 期待値の調整: 実務経験がないこと、パラレルワークであることなどを正直に伝え、提供できる範囲や納期について無理のない計画を立て、クライアントとしっかりすり合わせを行います。過大な期待を抱かせないことが、信頼関係を維持する上で重要です。
- 誠実さと真摯な姿勢: 実績がない分、一つ一つの案件に対して真摯に取り組み、誠実なコミュニケーションを心がけることが、今後の信頼と継続的な依頼に繋がります。
- 継続的な関係構築: 案件の有無に関わらず、定期的に連絡を取り合い、良好な関係を維持することで、新たな相談や紹介に繋がりやすくなります。
まとめ:あなたの営業経験こそが最高の武器
実務経験ゼロからブランディングのパラレルワークを始める際、多くの人が抱える不安の一つが「どうやって最初の案件を獲得するか」という点です。しかし、IT企業の営業職として活躍されてきたあなたには、その不安を解消するための強力な武器、すなわち「営業人脈」と「営業スキル」があります。
あなたがこれまで築いてきた信頼関係、相手のビジネスを理解する力、そして課題を引き出すヒアリング力は、ブランディングという「無形」のサービスを提供する上で非常に重要な基盤となります。
完璧なポートフォリオや実績が揃うのを待つ必要はありません。まずは身近な人脈に、あなたがブランディングについて学び、どのようなことに貢献したいと考えているのかを、自然な形で伝えてみてください。そして、相手のビジネスに耳を傾け、小さな課題に対してあなたのスキルがどのように役立つかを具体的に提案してみましょう。
あなたの営業経験と独学で培ったブランディング知識を掛け合わせることで、きっと最初の扉を開くことができるはずです。ぜひ、勇気を持って最初の一歩を踏み出してください。応援しています。